朝日連峰縦走路の起点として、または終点のピークとして、多くのアルピニストにその名を知られている以東岳。庄内地方の最奥にあって、連峰の主峰朝日岳から12kmを隔て、壮大なボリュームと存在感を示している。
標高1771mと、決して高くはない山でありながら著名であるのは、ひとえにその質量感にあるといっていい。
米どころ庄内平野を潤す赤川の源流、大鳥川から更に、支流東大鳥川に添って分け入れば、いくつもの渓流と美しいブナ林が迎える以東岳への道。
原生林の中をゆっくりと足を運び、最後のつづれ折りの小径を経て、標高1000mにある湖、大鳥池に着く。満々と水をたたえた大鳥池は山小屋とキャンプサイト、池周辺の散策路、釣場もあって、家族で一日を楽しみ大自然を深呼吸する絶好地。ここは、磐梯朝日国立公園最北の地域でもあり、原生林と動植物の穢れなき別天地である。
残雪を多くまとい、まぶしく輝いて大鳥池を抱きつつむように立つ以東岳、紅葉を背にして澄みきった空の中に堂々たる姿を見せている、これも以東岳。大鳥池の四季に雄大な山影を落とし、清浄な水をつくり続ける山は、夏登山のピークを除けば静寂そのものであり、昨今のブームをよそに人跡希な、自然豊かな山らしい山である。
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