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出羽三山と朝日連峰、飯豊連峰、吾妻連峰と安達太良山、磐梯山、そして猪苗代湖の5つの地域からなる磐梯朝日連峰国立公園は、北海道の大雪山国立公園に次ぐ広大な面積をもち、本州を代表する山岳自然公園を形成している。山形、新潟、福島の三県にまたがる山岳公園の北の最高峰が月山である。
庄内側から山頂へ向かう道は二つあって、そのいづれも古くから拓けた出羽三山登拝のメインルートである。三山の神々を祀る合祭殿を置く羽黒山と奥の院とする湯殿山を結んで、長い積雪期を除いてはこの道に人の絶えることがない。1,984mの月山は、俳聖芭蕉もまたその生涯に残した足跡の最も高い地点であるという。
羽黒山口のルートは月山高原ラインが八合目まで貫いており、最盛期にはバスが連なって登り軽装の人々が弥陀ヶ原の木道を散策する。
広々とした緑の月山高原牧場を見下ろしながら大満原を走り、ブナを主とする落葉広葉樹の原生林を縫う。森林限界に近づくと長い風雪期がつくった奇形偏樹林帯に入り、西に大展望をひらく標高1,300mの八合目に到着する。眼下に庄内平野を収め日本海と、時には水平線上に佐渡ヶ島も現われる。岩場の多い登山路ではあるが、そこは山頂まで続く花の道でもある。九合目仏生池を過ぎ行者返しという急坂を越えてモックラ坂を登り切ると、突然大峰の稜線に立ち上る。西にほぼ垂直に切れ落ちた断崖の底から涼風が吹き上げ、爽快感と大自然の崇高さが全身をつつみ込むところである。山頂は近く、残雪の原と巨岩の間を行けば眺望全開の別天地に着く。
西に金姥、姥ヶ岳、仙人岳と連なり、南には長大な朝日連峰の山並みがある。
湯殿山から辿る道は月光坂の石坂と連続する鉄梯子をよじ登るところから始まる。少し手応えのある出だしになるが、登り切れば清浄な水場や雪渓に迎えられ、やがて春夏スキーのメッカ姥沢からのルートと合流し、重量感溢れる月山の全容を仰ぎ見ながらの登行となる。思い出に残るコースの一つになるだろう。
他に西川町側、大蔵村側の道があり、中でも肘折温泉から入って念仏ヶ原をゆく全長20.3kmの道程をひた歩くコースは月山最長ルートである。
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