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山形、秋田両県を合わせて9つの起点と13のコースをもつ鳥海山。そのうち5つの起点と7つの登山路が庄内にひらかれている。山頂に向かう登山路の多くは既に標高1,000m前後から始まっており、多少の難を克服すれば日帰りも可能であり、気軽に楽しめる高山の一つになった。東北第一等の独立峰であるその頂きに立てば周りに眺望を遮るものはなく、ぐるり東北の名だたる山々が視界に入る。
南麓滝ノ小屋(標高1,200m)から鳥海一の広大な花園、河原宿への道は一日中陽光が溢れている。河原宿にたどり着くと眼前に外輪山の全貌があり、これより辿る大雪渓、心字雪が涼風をつくってその雪解け水が傍を流れている。雪渓を歩き、このコース随一の急登薊坂を登り切れば、外輪山の一角、伏拝岳、9合目(標高2,000m)に達する。北側足下は200mの落差で切れ落ち、底に千蛇谷が横たわって、更に対岸には黒々と新山の岩塊が現れている。
山形県吹浦と秋田県象潟を結ぶ山岳道路、鳥海ブルーライン全長34.9kmの中間点標高1,000mにある大平山荘を出て蔦坂という急坂から始まるコースは、数ある登山路の中でも最も古く、鳥海信仰登山の主要道であった。もとは海抜0mからの道筋であり、「日本百名山」の著者自身も海辺の町吹浦から登りそれを記している。
コース中腹7合目1,700m地点の御浜神社に着くと南眼下に火口湖鳥海湖が美しく空を映し、丸い鍋森のむこうに酒田港を遠望することができる。長い八丁坂の下りをひかえたピーク扇子森に立てば、正面に荒々しく聳える山頂が迫り、矢島や仁賀保の池塘群を見渡し、南遥かに月山も見える。
七五三掛の分岐から外輪山と千蛇谷の道に分かれ、険しく波うつ外輪の屋根と、右にその絶壁を仰ぎながら長大な雪渓の谷を登る二つの道がある。いづれを選んでも大自然の絶景を満喫することにかわりはない。
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●奈曽渓谷 |

●新山山頂から七高山と日の出 |

●河原宿から心字雪渓 |
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