『予 感』     1983年01月(第226号) 

 その土地ごとに、或る決った空の高さがあ
 るように思える。それは季節や一年を通し
 て、いってみれば心に届く光の量かも知れ
 ない。この絵は宵闇の、それも冬の予感の
 中で描いたようにも思える。


 『三河風景』    1983年03月(第227号) 

 根雪の下から草の芽の黄緑が顔を出し、空
 が少し高くなる。次第に勢いを増して、風
 景が色を取り戻す。夜明けの感動に似た季
 節が春。冬眠虫も起きだして、何か……何
 かしたくなって来ませんか?


 『シクラメン』   1983年04月(第228号) 

 “時が過ぎ去るのではない、人が過ぎ去る
 のだ。”毎日、昨日の服を脱ぎ捨てて、人
 は見知らぬ明日への旅人なのです。……旅
 人に、“どちらまで?”とききますと……
 “チョットそこのタバコ屋まで!”


 『宵 闇』     1983年05月(第229号) 

 赤いワインの底に、揺れる1粒1粒の潰れ
 た夢。今日の太陽も、潰れて消えた。ひと
 とき……宵闇。潰れた夢の哀しみを反芻す
 る。ゆらゆら揺れるグラスの底に赤く輝く
 小さな嵐――あなたの眼の光。夏。


 『薔 薇』    1983年07月(第230号) 

 夏の一瞬前の季節には、ある不安定な気
 分に陥いる。若草の突然の量と、色の変
 貌に圧倒されてしまうのかも知れない。
 その生命力。せめて、この(選挙じゃな
 いが)白薔薇ほどに燃えて……夏。


 『通 り』  1983年09・10月(第232号) 
   
 季節にしろ明解なものはある残酷さを常
 に持ち、けだるく流れる胸に棘を残す。
 眩暈(めまい)と暑さに追われて夏も過ぎ
 れば一瞬の幻。夏の膨らんだ夢の抜け殻
 に水をあげよう。暫く反芻……すれば、
 秋。いつものとおり。

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