BGM
【 曲 名 】憂鬱な心   Little Valley

NO.2
[1]  [2] 

枕元で着信音が響いた。
目が覚めた・・・・・・・・・・・・・・。
 
「もしもし〜・・なんだよ、こんな朝早くから」
 
「何寝ぼけているのよ、もう11時過ぎてるんだから」
 
「なんだ、Yちゃんかよ。」
 
「なんだじゃないわよ、まったくもう! 今日、約束したじゃない」
 
「あれ、そうだっけ?」
そういえば、一昨日の夜そんな約束したような・・・・・・。
夕べは、深夜1時頃まで仕事して、その帰り職場のTと飲んで家に帰ったのが
朝の4時頃になってしまったのだった。

明け方まで飲んだが、酒量が多くないためか目覚めは悪くない。
 
「今、何処にいるんだよ?」
 
「何言ってるのよ、10時でMで待ち合わせでしょ!もう」
 
「ああ、そうか、そうだっけか・・今すぐ行くよ」
アルコールのせいか、年のせいか、すっかり約束など頭から消えていたのだ。
急いでシャワーを浴びMへと車を走らせた。
Mまでは、20分ぐらい。ドアを開けた。
 
「いらっしゃい!」
マスターの声だった。
 
「Aちゃん、女性を待たせるなんて最低だよ」
 
「あは、俺だっていろいろと何かと大変なんだよ」
 
「何が大変よ」
マスターとの会話を聞いていたY子が間に入ってきた。
わかったよ〜まずは、コーヒーでも飲もうかと言ってカウンターに座ろうとしたその時、
携帯が鳴り出した。
携帯をチラっとみて「ハッ」っと思った。K子からだったのだ。
そうだ、ゆうべ飲んでる時に電話が来て今日、会う約束をしていたのだった。
 
「ちょっとゴメン、仕事の電話入ったから」
そう、ごまかして店の外に出た。
 「もしもし、ごめん〜すっかり忘れてしまってたよ」
 「しょうがないよね、いつだってそうなんだから・・・・・・・・」
 「今、何処にいるんだよ」

 「エヘ、何処だと思う?」
 「そんなの解らないよ」

 「じゃあ、教えてあげようかな」
 「あ・な・た・の後ろにいるよ!」

慌てて振り向いた
 「ガア〜〜〜何でそこにいるんだよ」
K子の車がそこに止まっていた。
「冗談だよな」「嘘だよな」と心の中で言葉を吐き捨てた。
 「何でここにいるんだよ!何でなんだよ」
そう言いながら顔は笑っていたが頭の中では、これからのいろいろな場面が走りはじめた。
即、彼女の車に駆け寄って問いかけた。
 「どうしてここに居るのが解ったんだよ」
 
「だって、途中の交差点で信号待ちしてたら、あなたの車が走っていくのが見えたからね
  後を追って来ちゃったのよ、来ては良くなかったの? ねえ・・・」

 「そ、そんなことはないけど・・、どっか行こうよ」

と言って即助手席へと乗り込んだ。
 「何処に、行くの?」
 「とにかく走りながら考えようよ、さあ行こう行こう」

急き立てた。車は直ぐに走り出した。
 「Aちゃん、なんか怪しい、変よ」
 「な、何が」

 
「もしかして、あの茶店で女の人と会ってたんじゃない?」
ドキ、思わず動揺してしまった。
噂には聞くがやはり女の感は鋭いものがある。
 「そ、そんなことはないよ、二日酔いの時は、いつも利用してるんだよ」
その時、携帯が鳴り出した。直ぐさま保留ボタンを押して電源を切った。
 「あら、出なくていいの?」
 「ああ、どうせ会社の連中だからいいんだよ」

 「そう、でも何か今日のAちゃん変だよね」

 「何もないよ、気にするな」

頭の中では、Y子の事がとても気になっていた。
まさか、こんな事態になるとは・・・・トホホ・・・・・。
 「Aちゃん、何処に行く?」
 「どこでも、すきなとこ行ってくれよ」

 「なによ、その投げやりな言い方、それじゃあホテルがいいかな?」

 「ばか、そんな浮気できっかよ・・・・あっ」

 「えええ、私って浮気?どういう事よそれって、やっぱり他に女の人がいるんだあ」

 「ごめん ごめん、ち、違うよ、最近ドラマの見すぎでつい言葉が出でしまったんだよ、ホントだよ」

少し先の路地裏に入って車は止まった。
 「あなたの疑惑はこれで、これでもう4回目よ、今回は軽いんだけど」
 「私、一人になって少し考えたいんだけど降りてもらえる?」

 「え、解ったよ落ち着いたら連絡頂戴」

 「何言ってるのよ私頭に来てるんだから、早く降りてよ」

 「はい、はい」

車を降りてドアを閉めた。直ぐに車は走り出した。
確か、前にもこのような場面があったような気がした。
「ま、いっか」とつぶやいて携帯の電源をONにした。
そして、会社のTに電話を入れた。
 
「あ、もしもし、俺だよ」
 
「はい、夕べはお世話になりました」
 
「いやいや、こちらこそ、あのね今7号線のKラーメンをまがったとこにいるんだけど
  迎えに来てくれないかな」

 
「え、どうしたの?」
 
「とにかく訳はあとで話すから、早く来てもらえるかな」
 
「ん、解ったすぐ行くよ、じゃあ」
10分位過ぎて、Tの車が見えた。
 
「お待ちどうさん」
 「ほんと、ありがとうさん」
 
「Aさん、また女の人がからんでるでしょう?」
 
「そう言うなよ、オレって病気なんだから、しょうがないんだから」
世間話をしながら茶店Mに戻った。
Mの駐車場には、Yちゃんの車はなくなっていた
”よかった”Tに聞こえないように言葉を口にした。
 
「Aさん、ここが密会の館ですか?」
 
「何言っているんだよ、まあね、なんちゃって」
 
「とりあえず、コーヒーでも飲んで行けよ」
 
「うん、そうしようかな」
ドアを開けた。
 
「Aちゃん、戻ってきたか」
マスターだった。
 
「うん、Yちゃんかえった?」
 「う、うん」

 「そうか、良かった、良かった」

 
「彼、うちの会社のTだ、よろしくね」
 「Tです、よろしく」

Tが挨拶したとたん、奥のドアがひらいた。
 
「あれ〜、Yちゃん、何で?」
 
「ワタシが居なくて、ほんとよかったね!」
 
「な、な、なんで!!!」
頭の中がパニックに陥った。
Y子の後からK子が現れてきたのだ。
彼女らを見つめたまま、言葉にならなかった。
K子が言葉にした。
 
「Aちゃん、どういう事かわかる?」
コップの冷水を口にして少し落ち着きを取り戻して答えた。
 
「何か、こういう場面テレビで見た事あるよ、あのブラックメールだっけか
  それと、おんなじだな、俺ってみんなに騙されてるのかな?」

 Y子が言った。
 
「なに言ってるのよ、私たちを騙してたのはAちゃんよ、Kと私は高校の同級生なのよ」
 「うそ!Yちゃん歳、誤魔化してたのか、二人が同じ高校の出身だったのは
  知っていたけどね、まさか同級生とはな・・・・」
K子:
 
「Aちゃん、そうやって他の女の人にも声かけてるんでしょ、Y子と話ししてたら
  一人の人物が一致したのよ、それがAちゃんだった」

Y子:
 
「まったくもう、Aちゃんはだらしないんだから」
A:
 
「そんなに、いじめるなよ!声かけられてのってきたのは君らじゃないか」
K子:
Y子:
 
「それはそうだけど・・・・
側にいた、Tは帰ろうとしたのだが引き止めた。
彼がいればあまり言われないだろうなと思い。

甘かった。

そのあと、私は、さんざんに二人にやり込められたのだ。
マスターは隅のほうで関係ない振りして苦笑いを時々していた。
Tも2人の剣幕にたじたじしてる様であった。
時は、2時間ぐらい過ぎただろうか・・・・・・・・・・。
やっと、開放された。

もう女はいいや、めんどうな生き物だ・・・ブツブツ独り言を言いながら車に乗り込んだ。
時計は、6時7分を表示していた。
このままじゃ、気分的にもすぐれないや。
飲みにいこう!!
 
「お晩です。」
 
「おお、Aさん、レンチャンかい、いらっしゃい」
Iちゃんがでてきた。
カウンターには、ひとりの女性が座っていた。
 
「こんばんは、隣におじゃまします」
 
「どうぞ」
振り向いた彼女は、とても美しかった。

私の、美しい癖がまた始まりだした。




終章

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